ある会計系ファームEPRコンサルタントの1日（後編）

  ‐‐‐‐‐‐‐‐‐profile‐‐‐‐‐‐‐‐‐
名前：大川　渡（仮名）
年齢：29歳
学歴：都内有名私立大学卒(在学時に1年間米国に留学)
職歴：1996年新卒入社


〜後編：巨大プロジェクトでの業務分析・見積り実践〜

某大手会計系コンサルティングファームのパッケージソリューション（ERP）コンサルタントとして
活躍されている大川さんに、とある1日を聞きました。
約1年間に渡る米国長期出張を終えて帰国した大川さんを待っていたのは、
某大手上場企業へのERP導入プロジェクト、
しかも導入検討フェーズという上流段階の大きな仕事でした。
米国で一周りも二周りも成長してきた大川さんに、
このプロジェクトでの「ある1日」 を伺いました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・（1998年X月X日：東京）・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

午前7時 ：起床
  オフィスまで歩いて5分というラクチン通勤は夢だったのか?
  久しぶりに体験する東京の痛勤地獄に揉まれながら、
  米国オフィスからやってきて都内某有名ホテルに滞在中のマネジャーのお迎えにあがる。
  ホテルでマネジャーとBreakfastミーティング。
  自分はこのマネジャーと2人3脚で、クライアントの業務要件と某ERPパッケージの機能との
  適合性検証などを担当することになっている。
  また、このマネジャーと東京オフィスのスタッフとの間に立って通訳をしたり、
  彼の作成したプロジェクト見積りなどの資料の和訳をすることなども、仕事のひとつだ。
  これは雑用と言えば雑用だが、おかげでこのマネジャーとの意思疎通が非常にうまくいくことに
  なった。
  彼が机をガンガン叩きながらまくしたてている時でも、
  巧妙な誇張や議論の本当のポイント などが分かるようになってきた。
  自分の「コンサルタント英語力」が格段に向上したわけだ。 役得、役得。
  その後タクシーでオフィスへ向かう。

午前9時 ：オフィス到着
  VoiceメールとE-mailをチェック。
  米国滞在時のチームメイトから来た近況報告に返信。

午前9時30分 ：マネジャーとのミーティング
  ２週間後に迫ったクライアントへの「プロジェクト見積り/パッケージ選定のポイント」
  プレゼンテーションに向けて、
  まずはマネジャーと詰めの打ち合わせ。
  彼が米国から取り寄せた様々な同一領域のプロジェクト事例を、参考までにと渡される。
  最先端の成功事例を目の当たりにし、一気に気合が入る。

午前10時30分 ：Fit＆Gap Analysis
  クライアントの業務要件とERPパッケージの機能との適合性検証（昨日までの作業の続き）。
  最近の猛勉強とマネジャーからのKT（Knowledge Transfer：知識伝達）のおかげで、
  自分にとってほとんど未知の領域だった会計業務領域の知識がずいぶんと身についてきた。

午後12時 ：プロジェクトスタッフとランチ
  別のパッケージ導入見積りを担当しているコンサルタントは、あいにく英語が苦手。
  だが彼は得意の愛嬌とユーモア溢れるボディランゲージでそれをカバー。
  ランチではとりあえず仕事は忘れて、日米のワークスタイルの違い等に関して、
  ちょっとしたディスカッションに興じる。

午後1時 ：マネジャーとのミーティング
  プロジェクト見積りのための様々な前提条件を再確認。
  また、従来のカスタムメイドシステムの見積り方法とERPパッケージ導入見積り方法との
  違い について、彼からレクチャーを受ける。

午後3時 ：見積りワークフローの作成
  彼から受けたレクチャーを元に、今回の見積りのポイントを押さえつつ、
  一連の見積り作業を スタッフ間でよりよく共有するために、見積りワークフローを作成。

午後5時 ：日本語での「見積り前提条件リスト」作成
  再確認した見積り前提条件をまとめた表資料の作成作業。
  作成後、見積りワークフローと併せて、プロジェクト担当パートナーとその他スタッフに送信。
  その後Fit＆Gap Analysisの続き。

午後8時 ：プロジェクトスタッフとのミーティング
  腹が減っては戦はできぬ、なんだが、メシ食ってる時間なんてない。
  「見積りワークフロー」と「見積り前提条件」を元に議論し、スタッフ間で今後の詳細見積り
  作業に関する手順とポイントを確認・共有。
  その後、マネジャーから見積りツールの使い方に関する簡単なレクチャーを受ける。
  あまりに腹が減り過ぎて思考が鈍り始め、途中から的を射てない通訳となってしまい、
  皆さんのお叱りを受ける。
  （そんなこと言われたって!!）

午後11時 ：見積りツールに必要情報をインプット
  ようやく一通りの見積り前提条件が出揃い、見積りツールに入力。
  ツールから弾き出された天文学的な数字に腰を抜かしてしまう。
  クライアントには、ERP導入の本質的な目的と期待効果、そしてウチの生み出す付加価値を
  きちっと理解してもらわないと、こんな大型プロジェクトにGOサインは出るわけがないぞ。
  ここからがコンサルタントの腕の見せ所だ。
  しっかし、腹が減っては戦はできぬ。 今日はここらで切り上げるとするか。ねー、マネジャー。

午前12時30分 ：遅いディナー
  マネジャーその他スタッフと一緒に繁華街に繰り出し、一杯やりながら遅メシ。
  マネジャーから米国でのERP導入プロジェクト事例についていろいろと裏話!?を聞く。

午前3時：帰宅
  フロにも入らず、敷きっぱなしのフトンにそのままバタンキュー。